イオインダストリー株式会社(IO INDUSTRY CO.,LTD.)

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ヒート&クール成形技術

投稿日:2022年5月18日 カテゴリー:製品と技術 / 技術・研究開発 / 設備機械

「ヒート&クール成形技術」の開発背景

イオインダストリーは、自動車のプラスチック意匠部品を生業としているため、傷のように見える射出成形のウエルドラインの解消は大きな課題でした。
従来は、お客様の要求品質に応じてウエルドラインを消すために、後工程でタッチアップ塗装などを行っていました。
それによるコストアップや環境に対する影響が懸念され、解決策を模索していました。
”ヒート&クール成形”では、プラスチック意匠部品が成形機から出てきた段階でウエルドレスとなり、品質とコストを両立させることに成功しました。

ウエルドラインの発生(ヒート&クール成形技術の適用前)

金型内に射出された溶融プラスチックは、先端部分から次第に冷却されながら流動します。
少しずつ固化が進み、溶融プラスチック同士が合流してぶつかり合い、そこに、下図の赤矢印で示すような境界線のような模様が発生します。
この境界線状の模様をウエルドラインと呼んでおり、プラスチック同士がぶつかった時の融合温度が低いほどはっきりと現れます。

ウエルド ウエルドライン 外観不良 ヒート&クール成形 射出成形 
 2方向から流れてきた溶融プラスチックがぶつかるところにウエルドラインができる

図1. ウエルドライン

ヒート&クール成形技術で、ウエルド対策と生産性を両立

ヒート&クール成形技術は、プラスチック製品を射出成形する際に発生するウエルドラインを解消することができます。
イオインダストリーでは、水を媒体にした急速に加熱冷却する工法で、金型内の溶融プラスチックの流動をコントロールしています。
金型内の溶融プラスチックの流動解析シミュレーションにより、最適な条件を見いだして、ウエルド対策を施した射出成形を行っています。

ウエルド ウエルドライン 外観不良
 コストダウン ヒート&クール成形 高効率 樹脂成形
           高効率なウエルドレス成形を金型の急速加熱冷却工法で実現

図2. 従来工法と開発工法(ヒート&クール成形/ウエルドレス成形)の比較

ヒート&クール成形技術の特徴

・成形時のウエルドラインの発生を抑制
・溶融プラスチックの充填に合わせ、金型内で超高温水と低温水を瞬時に切り替えることが可能
・成形品への熱伝導率を最適化するため、金型温度をモニターで管理
・流動解析シミュレーションによる射出成形条件の最適化

ウエルド対策 ウエルドレス成形 意匠性向上 ヒート&クール成形 材着成形 流動解析シミュレーション 射出成形
  流動解析シミュレーションによる射出成形条件の最適化によるウエルドレス成形品

図3. ウエルドレス成形品

ヒート&クール成形技術で、金型表面の正確な転写

ヒート&クール成形技術を適用することで、金型の表面をそのまま転写できるようになります。
イオインダストリーでは、鏡面のような高光沢で美しいピアノブラックのセンターガーニッシュやインジケータなどを成形しています。
ヘアライン、シボ、カーボン繊維調など、金型表面をそのまま転写することで、表情豊かな美しい面を成形することもできます。
ヒート&クール成形技術では、成形品の表面をとても滑らかに成形できるので、塗装やメッキなどの加飾製品の下地としても適しています。

ウエルド対策 ウエルドライン 意匠性向上 コストダウン ヒート&クール成形 ウエルドレス成形、塗装レス 材着成形 鏡面 ピアノブラック
ウエルドレス成形、塗装レス、材着で鏡面のように美しいピアノブラック成形品

図4. ウエルドレス、塗装レス、材着成形でピアノブラックのインジケータを成形

プラスチック材料そのものを着色して射出成形することで、塗装レスで材料の色味を活かした成形品ができます。
これを材料着色(材着成形)と呼んでいます。塗装レスで、環境に優しい着色加飾技術のひとつです。
ヒート&クール成形技術と組み合わせると、材料特有の色味、質感を活かした美しい仕上がりの成形品が造れます。
ピアノブラックのセンターガーニッシュやインジケータもその一例です。

ヒート&クール成形技術で、意匠性の高さと生産性を両立

ウエルド対策に最も有効な手段は金型温度を高温に保つことですが、金型温度が高いほど成形時の冷却固化時間は長くなり、生産性の低下につながります。
ヒート&クール成形技術では、金型の温度を急速に加熱冷却できるので、金型内での充填成形後、プラスチックが急速に冷却されて固化が進み、成形時間全体が短縮でき、生産性が向上します。
薄い物の成形では、狭い金型内へのプラスチックの充填が難しいのですが、プラスチックの充填時に金型を加熱し流動性を上げることで、短時間で狭い金型内の隅々までプラスチックの充填を可能とし、高良品率、高効率な成形を可能にしています。

〖用語説明〗ピアノブラックとは

ピアノブラック”とは、読んで字のごとく 「ピアノのようなブラック」 のことで、まさに、高級感の漂う色です。
ピアノの製造では、鏡のような輝きの黒色をだすために、ピアノの表面に下地塗料を吹き付け、サンドペーパーで研磨、その後、塗装と研磨の工程を何度も繰り返します。
非常に手間をかけた結果、鏡面のような美しい黒が生み出され、これをピアノブラックと呼んでいます。
ピアノブラックは、自動車の内外装のほかにも、液晶テレビ、ゲーム機、パソコン、冷蔵庫、炊飯ジャー、コーヒーメーカー、スピーカーなどに広く使われています。

  

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